大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 平成元年(行ウ)7号 判決

北九州市小倉北区末広一丁目九番一一号

原告

永久敏幸

右訴訟代理人弁護士

吉野高幸

同右

荒牧啓一

同右

河邉真史

同右

年森俊宏

同右

住田定夫

同右

配川寿好

同右

江越和信

同右

前田憲徳

同右

佐藤裕人

同右

安部千春

同右

田邊匡彦

同右

横光幸雄

同右

尾崎英弥

同右

前野宗俊

同右

高木健康

北九州市小倉北区萩崎町一番一〇号

被告

小倉税務署長 鈴木博之

右指定代理人

菊川秀子

同右

阿部幸夫

同右

内藤幸義

同右

福田寛之

同右

田端芳一

同右

福岡久剛

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告が原告に対して昭和六二年二月二三日付けでなした昭和五八年分所得税の総所得金額を一二七八万二四三五円、同年分の過少申告加算税額を一五万四五〇〇円、昭和五九年分所得税の総所得金額を九三七万一〇一五円、同年分の過少申告加算税額を一三万七〇〇〇円、昭和六〇年分所得税の総所得金額を九九七万四三〇七円、同年分の過少申告加算税額を一五万二〇〇〇円とした各更正処分のうち、総所得金額が昭和五八年分につき二二五万四八三四円、昭和五九年分につき二一八万六三三〇円、昭和六〇年分につき二五四万一九二四円をそれぞれ超える部分及び右各年分の過少申告加算税額の賦課決定処分を取り消す。

第二事案の概要

一  争いのない事実(本件処分等)

1  原告は、北九州市小倉北区魚町の通称「旦過市場」内の店において、北九州市小倉北区の料亭、寿司屋、小料理店などの料理飲食店を得意先とする、鮮魚等の魚介類小売業を営んでいる白色申告者である。

2  原告は、それぞれ法定の申告期限内に、昭和五八年分の総所得金額を二二五万四八三四円、同年分の所得税額を一一万五八〇〇円、昭和五九年分の総所得金額を二一八万六三三〇円、同年分の所得税額を八万一〇〇〇円、昭和六〇年分の総所得金額を二五四万一九二七円、同年分の所得税額を一一万三九〇〇円とする確定申告を行った。

3  被告は、昭和六二年二月二三日、原告に対し、昭和五八年分の総所得金額を一二七八万二四三五円、同年分の所得税額を三二〇万九四〇〇円、同年分の過少申告加算税額を一五万四五〇〇円、昭和五九年分の総所得金額を九三七万一〇一五円、同年分の所得税額を一七〇万五七〇〇円、同年分の過少申告加算税額を一三万七〇〇〇円、昭和六〇年分の総所得金額を九九七万四三〇七円、同年分の所得税額を一八八万四六〇〇円、同年分の過少申告加算税額を一五万二〇〇〇円とする各更正処分及び過少申告加算税額の賦課決定処分(以下総じて「本件処分」という。)を行った。

4  原告は、北九州中央卸売市場(以下「北九州市場」という。)において北九州市魚市場株式会社などの業者から魚介類を仕入れていたが、この仕入金額(以下「市場仕入金額」という。)は、昭和五八年分は二七六八万三一一五円、同五九年分は二〇六二万四一三三円、同六〇年分は二一五九万八一七七円であり、その外にも旦過市場内の同業者らからも魚介類を現金により仕入れていたが、昭和六〇年分の右現金仕入金額は三八五万二四八九円である。

また、原告の昭和六〇年分の雑収入は、九六九四円である。

二  争点

被告は、本訴において、原告から提出された伝票等により、昭和六〇年分について推計を行い、その結果を基に昭和五八年分及び同五九年分の推計を行って本件処分の適法性を主張したが、本件の争点は、右推計方法に合理性があるか否かである。

1  昭和六〇年分の推計の合理性

(一) 売上原価及び総売上金額

(被告の主張)

(1) 原告の昭和六〇年分の総仕入金額は、前記争いのない市場仕入金額二一五九万八一七七円及び現金仕入金額三八五万二四八九円の合計二五四五万〇六六六円であるところ、原告からの資料の提出もなく、またその業態からすると、年初年末の棚卸の額を同額と推定して右総仕入金額を昭和六〇年分の売上原価の額とするのが相当である。

(2) 原告の魚介類小売業は、料理飲食店をその主な得意先とする特殊性を有しているため、旦過市場には、類似同業者で青色申告者は存しない。そこで、昭和六〇年分の現金仕入れに係る仕切書、得意先である「栄太楼本店」「同支店」「三四郎」「五郎」「もりた」「江戸満」「トリアノン」「ボールド」等に対する同年分の得意先売上に係る仕切書を基礎資料として、現金仕入れと得意先売上げとの対応関係を日ごと及び商品ごとに逐一検討した上で、本人比率である売上原価率をもって推計を行うのが合理的であると判断された。その結果、別表1記載のとおり、現金仕入金額二〇四万八四〇一円と得意先売上金額三〇四万二七一三円との間に対応関係が認められ、右得意先売上金額に対する現金仕入金額の割合(以下「原価率」という。)は、六七・三三パーセントとなる。この原価率は、現金仕入れに係る原価率であるが、市場から直接仕入れた魚介類に係る原価率がこれを上回ると考えられる事情はないので、右原価率でもって、昭和六〇年分の総売上金額に対する売上原価率と認めるのが相当である。そうすると、金額に争いのない同年分の前記総仕入金額二五四五万〇六六六円を右売上原価率でもって除することにより同年分の総売上金額を推計すると、三七七九万九八九〇円となる。

(原告の主張)

(1) 本件においては類似同業者率による推計を行うべきであり、被告がこれによらずに本人比率である売上原価率でもって原告の総売上金額等を推計していることは、不合理である。

(2) 別表1記載の一月九日における有限会社大賀商店(以下「大賀商店」という。)からのメンボ、サヨリ、アジの各仕入数量よりもその売上数量の方が多いにもかかわらず、被告が両者の対応関係を認めていることは、明らかに誤りである。さらに、昭和六〇年分の現金仕入れのうち、別表2(甲七一)の備考欄に日付と得意先名が記載された分については、その日の現金仕入と当該得意先への売上げとの間に対応関係を認めるべきであり、別表1に記載した分のみに対応関係を認めることは、不当である。

(3) 右原価率は原告が仕入れた魚介類の売れ残りや投げ売りを全く考慮していないので、右原価率による推計は、不合理である。

(4) 昭和六〇年分の得意先売上金額の実額は三二〇〇万八九九六円、昭和六〇年一月五日から同年二月一九日までの売上金額の実額は四五一万五二二六円、同期間中の現金売上金額の実額は三〇万九一〇〇円と把握することができるので、右各実額を基礎に推計を行うのが合理的というべきである。そうすると、右期間における売上金額に対する現金売上金額の割合は六・八パーセントになるので、右期間における売上金額に対する得意先売上金額の割合は九三・二パーセント(一〇〇-六・八=九三・二、以下「得意先売上率」という。)となる。したがって、昭和六〇年分の総売上金額は、右昭和六〇年分の得意先売上金額三二〇〇万八九九六円を右得意先売上率九三・二パーセントで除することにより推計した三四三四万四四一七円となる。

(二) 必要経費

(被告の主張)

原告は、昭和六〇年分の必要経費について、一般経費一八九万三七〇九円、特別経費一一九万五一〇一円の合計三〇八万八八一〇円であると主張する。しかし、一般経費である接待交際費のうち、三四郎に対する支払合計八万五〇二〇円について原告が提出する領収書は真実発行されたものとは認められず、得意先リベート二四万についてもその支払先は全く不明であって領収書も存在しないから、これらを必要経費として計上することは許されない。また、減価償却資産として計上した冷蔵庫については、真実の取得年月日を確認することができないから、これを減価償却資産と認めることはできず、その昭和六〇年分の減価償却費一六万一三五二円は必要経費として算入できない。さらに、同年分の特別経費のうちの給与手当八九万円については、支払を証明する給与台帳等の提出がないことなどからみて、右給与手当の支払があったとは認められず、これを特別経費として計上することも許されない。したがって、同年分の必要経費は、原告主張に係る右経費金額から三四郎に対する支払、得意先リベート、冷蔵庫の減価償却費及び給与手当ての各金額の合計一三七万六三七二円を控除した残額である一七一万二四三八円となる。

(三) 事業専従者控除額控除前の所得金額(以下「控除前所得金額」という。)及び総所得金額

(被告の主張)

前記総売上金額三七七九万九八九〇円及び争いのない雑収入九六九四円の合計額三七八〇万九五八四円から前記売上原価二五四五万〇六六六円及び必要経費一七一七万二四三八円の合計額二七一六万三一〇四円を控除した一〇六四万六四八〇円が原告の昭和六〇年分の控除前所得金額となる。そして、原告の妻永久伸子(以下「伸子」という。)の事業専従者控除額四五万円(昭和六二年法律第九六号による改正前の所得税法五七条三項一号)を控除すると、原告の昭和六〇年分の総所得金額は、一〇一九万六四八〇円となる。したがって、原告の昭和六〇年分の総所得金額を九九七万四三〇七円とする本件処分は、適法といわなければならない。

(原告の主張)

一般の鮮魚小売業者の所得率は一六・七パーセント、鮮魚卸売業者の所得率は六・三パーセントであり、原告の営業形態は小売業者と卸売業者の中間的というべきであるところ、被告の右推計に基づき算出された原告の所得率(前記総売上金額に対する右控除前所得金額の割合)である二八・一六パーセントは、全く非現実的である。また、本件における被告の推計の結果は、原告の生活状況や財産状況などと符号しない不合理なものである。

2  昭和五八年分及び昭和五九年分の推計の合理性

(一) 各年分の売上原価及び総売上金額

(被告の主張)

前記争いのない昭和五八年分及び五九年分の市場仕入金額は、それぞれ二七六八万三一一五円及び二〇六二万四一三三円であるところ、原告の仕入形態からみて総仕入金額に占める市場仕入金額の割合(以下「市場仕入率」という。)は昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて変動はないと考えられるから、昭和五八年分及び昭和五九年分の市場仕入金額を昭和六〇年の右市場仕入率である八四・八六パーセントでもってそれぞれ除することにより、昭和五八年分の総仕入金額を三二六二万二一〇一円、昭和五九年分の総仕入金額を二四三〇万三七一五円と推計した。なお、右各年の年初、年末の棚卸の額については、昭和六〇年分と同様の理由で右推計額とそれぞれ同額とした。そして、原告のような魚介類小売業においては、仕入価格に応じて販売価格が決定されると考えられるところ、昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて原告の事業内容に特段の変化がないことから、総売上金額に対する売上原価率にも変動はないと判断されたため、右昭和五八年分及び昭和五九年分の総仕入金額を昭和六〇年の売上原価率六七・三三パーセントでもってそれぞれ除することにより推計すると、昭和五八年分及び昭和五九年分の総売上金額は、それぞれ四八四五万一〇六三円及び三六〇九万六四二三円となる。

(原告の主張)

被告の推計方法によれば、昭和五九年初めに原告が入院、休業して得意先を失うなどして減収した事情を十分考慮することはできない。むしろ、昭和五八年分の得意先売上金額の実額を三七九五万五二七五円、昭和五九年分のそれを三一九〇万八五三〇円と把握することができるから、右各金額を右各年に通用する比率である昭和六〇年分の得意先売上率九三・二パーセントで除することにより右各年の総売上金額を推計すると、昭和五八年分は四〇七二万四五四三円、昭和五九年分は三四二三万六六二〇円となる。

(二) 各年分の控除前所得金額及び総所得金額

(被告の主張)

昭和五八年分及び昭和五九年分の経費のうち、一般経費については資料がなく、特別経費については原告主張の給与手当の金額に信憑性がないため、経費額を実額で把握することができないところ、原告の販売形態にかんがみると、昭和五八年分ないし昭和六〇年分における総売上金額に対する控除前所得金額の割合(以下「控除前所得率」という。)には差異がないものと認められるので、昭和六〇年分の控除前所得率二八・一六パーセントを昭和五八年分及び昭和五九年分の総売上金額に乗じて右各年分の控除前所得金額を推計すると、昭和五八年分は一三六四万三八一九円、昭和五九年分は一〇一六万四七四九円となる。そして、伸子の事業専従者控除額は、昭和五八年分が四〇万円(昭和五九年法律第五号による改正前の所得税法五七条三項一号)、昭和五九年分が四五万円(昭和六二年法律第九六号による改正前の所得税法五七条三項一号)であるから、これらを右各控除前所得金額からそれぞれ控除すると、原告の昭和五八年分の総所得金額は一三二四万三八一九円、昭和五九年分の総所得金額は九七一万四七四九円となる。したがって、原告の昭和五八年分の総所得金額を一二七八万二四三五円、昭和五九年分の総所得金額を九三七万一〇一五円とする本件処分は、いずれも適法といわなければならない。

第三争点に対する判断

(昭和六〇年分の推計の合理性について)

一  売上原価及び総売上金額の推計について

1 売上原価率による推計の合理性について

(一) 前記争いのない事実、証拠(甲一四の一ないし九三(ただし、一四の四四を除く。以下同じ。)、一五の一ないし六八(ただし、一五の四三を除く。以下同じ。)一六の一ないし一四、一七の一ないし一四、一八の一ないし一九、一九の一ないし五、二〇の一ないし一五、二一の一ないし三、二二の一ないし八、二三の一ないし七、二四の一ないし三、二五の一ないし六、二六、二七の一ないし三、二八の一ないし三、二九の一ないし八、三〇の一ないし一〇二、三一の一ないし二四三、三二の一ないし一一五、六三の一及び二、六四の一ないし一三、六五、証人永久伸子、原告本人(第一、二回)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、米田鮮魚店の名称で旦過市場内において、妻である伸子とともに鮮魚等の魚介類小売業を営んでいるが、対面販売を主とする小売店が集中している同市場にあっては、例外的に別表1記載の栄太楼本店及びその支店、三四郎、五郎、もりた、江戸満等の料亭や寿司屋等の料理飲食店を主な得意先としており、店頭における対面販売の割合は極めて小さく、右対面販売による現金売上げは多くとも一日当たり五〇〇〇円程度であり、時には現金売上げのない日も存するなど立地条件に左右されにくい販売形態をとっていること、このような販売形態は、昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて変化はなく、また、同市場内には原告の販売形態に類する同業者でかつ青色申告者は存在しなかったこと、原告は、仕入れ当日の売上げを想定して主に北九州市場において仕入れていたが、右仕入れの不足分を補うため、注文に応じて別表1記載の旦過市場内にある大賀商店、両羽鮮魚店、玉置鮮魚店等の同業者から現金仕入れをしたり、あるいは、直接鮮魚小売店に持ち込み販売するいわゆるかつぎ屋である角畑水産から、しゃこ、あさり貝、牡蠣など特定の魚介類の現金仕入れをしていたこと、このような仕入形態は、昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて変化はなかったこと、以上の事実が認められる。

(二) 右認定事実によれば、魚介類小売業者としての原告の営業形態は、極めて特殊であって、旦過市場内に原告の類似同業者でかつ青色申告者は存在しないというのであるから、原告が主張するような類似同業者率による推計は不可能であり、このような状況において原告の所得を推計するには、本人比率である売上原価率を算出するに適した正確な資料が得られる限り、被告主張のように右売上原価率でもって推計することは、やむを得ないものといわなければならない。特に、本件においては、同業者率等と比較して右売上原価率による推計の方が原告の右特殊性を推計結果により良く反映し得るものと解されること、原告の右認定の仕入形態からして、対応関係にある現金仕入れとその得意先への売上げとに基づいて算定する原告の売上原価率は原告にとって比較的有利なものとなる可能性があることなどからすると、被告の主張する右原告の売上原価率による推計は、正確かつ適切な資料に基づく限り、本件に適合した合理的な推計方法であると認めるのが相当である。

2 売上原価及び総売上金額について

(一) 原告の売上原価率を算出する前提として、現金仕入れと得意先売上げとの間に対応関係が認められるものを抽出する場合には、もとより正確な資料を用いなければならないことはいうまでもない。本件において、右対応関係を抽出するための検討対象となった証拠(甲一六の九ないし一四、一七の八ないし一四、一八の一一ないし一九、一九の四及び五、二〇の九ないし一五、二二の三ないし八、二三の四ないし七、二四の三、二五の六、二六、二八の二及び三、二九の一ないし八、三〇の一ないし一〇二、三一の一ないし二四三、三二の一ないし一一五、三三の一ないし九〇)は、その趣旨などからしていずれも原告の仕入先ないしは原告がその業務を遂行する過程において作成したものであることが認められる。そして、これらの証拠によれば、年間を通じて右対応関係の有無を検討することができる上、時季による商品の変動や偏りも避けることが可能となる。したがって、これらの証拠の記載内容は、恣意性の入り込む余地が少ない、客観的かつ正確なものと考えられる一方、後記のとおり、右証拠に記載された売上げ以外の売上げの計上漏れが窺われないわけではないが、これらの証拠は年間を通じて相当量のものが存しているのであるから、右対応関係を検討するための証拠としては必要かつ十分なものであると評価するのが相当である。

(二) 次に、右対応関係の抽出方法について検討すると、前記原告本人の供述によれば、現金仕入れに係る魚介類はそのほとんどが即日販売されることが認められるから、右対応関係の有無は、日付、品名、数量、単価、金額等を比較対照して、両者間に同一性ないし近似性等が認められるか否かによって決定するのが相当であると解される。この点、原告は、別表1記載の一月九日の大賀商店との取引例を挙げて、被告の主張する仕入れと売上げとの対応関係の中には仕入数量よりも売上数量の方が大きいにもかかわらず対応関係を認めているものがあり、不当であると批判する。しかし、前記認定の原告の業種、業態からみて、常に正確な計量が行われているとは考え難く、必ずしも仕入先における計量と原告の計量とが一致していなくとも、その差が対応関係を認めるには不適当な程大きくなければ不合理ということはできないし、また、原告主張のような右仕入数量と売上数量との間に差があるものについても、その差に相当する数量の商品を他から調達の上、売上数量と正確に合致させて販売しているとの事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると、右のように仕入数量よりも売上数量が大きい場合であっても、その差が近似したものである以上、対応関係を認めるのが相当である。そこで、右基準に照らして前掲2の一の証拠を検討すると、別表1の仕入欄と売上欄にそれぞれ記載されている仕入れと売上げとの間に対応関係を認めるのが相当といわなければならない。ただし、別表1のうち、売上先欄に記載されている「栄太郎」は、「栄太楼」の誤記であること、一月一二日のタチの仕入先は、甲三三の三に照らして田中鮮魚店からの仕入れであること、同月一四日に角畑水産から仕入れたとされる尺の仕入日は、甲三一の六に照らして同月一六日の誤記であること、二月八日のカニ二口の売上げのうち上段に記載されているものは、甲一八の一二及び三三の二二に照らして誤記として削除するのが相当であること、同月一三日の馬のメンボの仕入先は、甲三〇の一二に照らして玉置鮮魚店であること、三月二三日の尺の仕入先は、甲三一の四七に照らして角畑水産であること、四月一〇日のキスの仕入先は甲二九の八に照らして両羽鮮魚店であること、五月一四日の有限会社浜田水産からのサバの仕入れは、甲三三の三三に照らして数量は三本でなく二本、金額は六〇〇円でなく四〇〇円であり、その結果、これと対応するもりたの売上げは、数量が三本でなく二本、金額が一〇五〇円でなく七〇〇円であること、六月一二日の五郎に対する尺の売上金額は、甲二〇の一一に照らして一〇九七円ではなくて一〇九五円であること、同月二四日のベリーに対するスズキの売上金額は、甲二八の二に照らして二三〇〇円ではなくて二二〇〇円であること、九月六日の売上金額欄に三〇〇〇円とあるのは、もりたに対する尺二キログラムの売上金額であること、一〇月一六日の大賀商店からのイセエビの仕入金額は、甲三二の八六に照らして六〇一六円でなくて六〇七六円であること、一一月九日のカニ及び柱の仕入先は、甲三二の九六に照らして大賀商店であることがいずれも明らかである。さらに、一月一二日大賀商店から仕入れたタコと同日栄太楼支店へ売上げた飯だことの間には後記のとおり同一性が認められないので、また、八月一三日大賀商店から仕入れたメバル(数量三三〇グラム、単価三五円)と同日五郎へ売上げたメバル(数量四〇〇グラム、単価三九〇円)との間には数量や単価が大きく異なっているので、それぞれ対応関係を認めることはできない。したがって、別表1を右のとおり訂正した結果、別表1記載のうち対応関係が認められる現金仕入金額は二〇四万五八二七円、得意先売上金額は三〇三万六一三六円となる。

(三) ところで、原告は、昭和六〇年分の現金仕入れと得意先売上げのうち、別表2(甲七一)の備考欄に日付と得意先名が記載された分について、また、別表3(甲七九、八〇)の売上先欄に日付と得意先名が記載された分について、それぞれその日の現金仕入れと当該得意先への売上げとの間には対応関係を認めるべきである旨主張して、別表1に記載した分のみに対応関係を認めることは不当である旨非難する。

そこで、原告指摘の右各記載分について、前掲2の(一)の証拠に基づき前記基準に照らして対応関係の有無を検討すると、次のとおりである。

(1) 別表2について

〈1〉 一月分について

七日のスズキについては、三一五〇円の仕入分と五〇〇〇円の仕入分があり、別表1記載のとおり三一五〇円の仕入分は当日の栄太楼本店(以下、栄太楼本店を「栄太楼」ともいう。)への売上げと対応することが認められるが、右五〇〇〇円の仕入分に対応する栄太楼への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。七日の小丸(甲七一には小丸及び丸はふぐと同義である旨の記載はあるが、大賀商店の計算書(甲三二)には「小丸」の他に「丸」の記載が、また、三四郎に対する仕切書(甲一八の一一)には「ふぐ」の他に「かなとふぐ」「小ふぐ」の記載があるので、小丸と小ふぐ及び丸とふぐはそれぞれ同義であると認めるのが相当であるが、小丸とふぐが同義であると認めることはできない。)については、同日、三四郎へ小ふぐ(数量九二〇グラム、売値二三〇〇円)を売上げたことが認められ、品名が同義である上、数量が近似しているので、原告の主張のように対応関係を認めるのが相当である。九日のメジ(甲七一によりメジとはまちは同義であると認める。)については、栄太楼本店(数量二分の一、売値三八五〇円)及び同支店(数量一本、売値八五〇〇円)へはまちを売上げたことが認められるが、数量や仕入値と売値が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。一〇日の小丸ムキについては、当時の三四郎への仕切書(甲一八の一一、一二)には「むきふぐ」の他に「むき小ふぐ」の記載が認められるので、両者は異なるものと認められるところ、同日、三四郎へむきふぐ(数量八七〇グラム、単価五五〇円)を売上げたことは認められるが、「むき小ふぐ」を売上げたことを認めるに足りる証拠はなく、結局、小丸ムキとむきふぐの同一性が判然としないので、原告主張のような対応関係は認められない。一〇日のワカメについては、同日、三四郎、栄太楼及び同支店へのそれぞれワカメ五〇〇グラムを売上げたことが認められるが、いずれも数量が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のワカメについては、同日、栄太楼(数量五〇〇グラム、単価三五円、売値一七五円)及び五郎(数量三〇〇グラム、単価五〇円、売値一五〇円)へそれぞれワカメを売上げたことが認められ、数量が近似しているので、原告主張のような対応関係を認めるのが相当である。一一日の蛤については、同日、三四郎へ蛤(二キロ二二〇グラム)の売上げたことが認められるが、数量が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のタイについては、同日、三四郎へ活鯛(数量一キロ一八〇グラム、売値三七七六円)を売り上げたことが認められ、品名及び数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一一日の小丸については、同日、栄太楼へこふぐ(売値二〇〇〇円)を売上げたことが認められるが、仕入値と売値が大きく異なる上、三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のシャコについては、別表1記載のとおり当日の五郎への売上げ(数量八四〇グラム)と対応関係することが認められるので、原告主張のような対応関係は認められない。一二日の生子については、同日、朝香へ赤生子(売値二九〇〇円)を売上げたことが認められ、品名が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一二日のワカメについては、同日、栄太楼へワカメ(売値一七五円)を売上げたことが認められるが、仕入値と売値が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。一四日の青生子については、同日、五郎へ生子(数量七九〇グラム、単価二八〇円)を売り上げたことが認められるが、数量及び単価が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。一四日の丸については、同日、三四郎(数量二キロ八五〇グラム、売値一万八五二五円)及び五郎(数量一キロ八九〇グラム、売値一万二八五二円)へふぐを売上げたことがそれぞれ認められ、いずれも数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一五日のタイについては、同日、三四郎へ活鯛(数量一キロ三五〇グラム、売値四三二〇円)及び連子鯛(数量一キロ一八〇グラム、売値三五四〇円)を売上げたことが認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一七日の小丸については、同日、栄太楼へ小ふぐ(売値二〇〇〇円)を売上げたことが認められるが、仕入値と売値が大きく異なるので原告主張のような対応関係は認められない。一八日のムキイカについては、同日三四郎へいか(数量三キロ五〇グラム)及び冷いか(数量一キロ)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としない上、数量も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認めらない。一八日のイワシについては、同日、五郎へいわし(数量五六〇グラム、単価六〇円)を売上げたことが認められ、数量及び単価が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。二〇日のヨタイについては、同日、三四郎へ活鯛(数量一キロ四四〇グラム、単価三二〇円)を売上げたことが認められ、品名及び数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。二五日の丸については、同日、三四郎(数量二キロ七五〇グラム)及び五郎(数量七六〇グラム、売値四九四〇円)へふぐを売上げたことがそれぞれ認められ、仕入数量と五郎への売上数量が近似しているので、両者間に原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。三〇日の丸については、同日、三四郎へふぐ(数量九八〇グラム、単価六五〇円)を売上げたことが認められるが、数量及び単価が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。三一日のタチについては、同日五郎へ太刀(数量五八〇グラム、単価二四〇円)を売上げたことが認められ、数量が近似しているので、原告主義のように対応関係を認めるのが相当である。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は三万一五〇六円、得意先売上金額は合計五万一九五四円となる。

〈2〉 二月分について

七日の生子については、同日、もりたへ生子(売値五〇〇円)を売上げたことが認められ、仕入値と売値が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。八日のカニについては、同日、三四郎へかに(数量七九〇グラム)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。九日の車エビについては、同日、三四郎へ活車海老(数量四〇〇グラム)を売上げたことが認められ、品名及び数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一二日の大カキについては、同日、ベリーヘかき(売値一四四〇円)を売上げたことが認められ、品名が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一四日の鯛については、同日三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二〇日のタコについては、同日、五郎へ飯だこ(数量五八〇グラム、単価二三〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められず(甲二〇の九には飯だこの他にたこの記載があるので、両者は品名が異なるものと認められる。)、単価も大きく異なる上、他にタコの売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない(なお、三月二日、一五日、四月一二日、七月四日、一〇日の各タコについても、同様の理由により原告主張のような対応関係は認められない。)。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は四五六四円、得意先売上げ金額は六三四〇円となる。

〈3〉 三月分について

九日のジャコについては、同日、もりたへしゃこ(数量三キログラム、売値四五〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のアサリについては、同日、栄太楼本店(数量一キロ五〇〇グラム、売値一〇五〇円)及び同支店(数量二キロ五〇〇グラム)へあさり貝を売上げたことがそれぞれ認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二〇日の赤エビについては、同日、もりたへしゃこ(数量二キログラム、売値三〇〇〇円)を売り上げたことが認められるが、両者に対応関係を認めると仕入単価と売値単価が同一となって不合理である上、赤エビとしゃことは異なるものと認められるので(同日の角畑水産の納品書(甲三一の四五)には、しゃこについては「尺」と記載され、その他に「赤エビ」の記載が認められるので、しゃこと赤エビとは異なるものと認めるのが相当である。)、原告主張のような対応関係は認められない(なお、三月二二日、二三日、二五日、二九日、三〇日、四月二日、五日、六日、九日、一八日、二〇日、五月二三日の各赤エビについても、同様の理由により、原告主張のような対応関係は認められない。)。二一日のメジについては、翌二二日、栄太楼へはまち(数量二分の一)を売上げたことが認められるが、日付が異なる上、数量も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二一日のアワビについては、八〇〇グラムの仕入分と一六〇グラムの仕入分があり、別表1記載のとおり一六〇グラムの仕入分は当日の三四郎への売上げと対応することが認められるが、八〇〇グラムの仕入分に対応する三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二二のチシャ(甲七一によりチシャと石鯛は同義であると認める。)については、同日、五郎へ石鯛(数量一キロ四九〇グラム、単価四八〇円、売値七一五二円)を売上げたことが認められ、品名が同義であり、数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一二日の上巻については、同日、三四郎(数量二三〇グラム、単価三五〇円)及び栄太楼支店(数量六七〇グラム、単価三五〇円)へ千年貝を売上げたことがそれぞれ認められるが、品名の同一性が認められない上、数量及び単価が大きく異なるので、原告主義のような対応関係は認められない。二七日のチシャについては、同日、三四郎へ石鯛(数量一キロ五八〇グラム、単価四八〇円、売値七五八四円)を売上げたことが認められ、品名が同義である上、数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。三〇日の赤エビについては、同日、三四郎へ海老(数量五〇〇グラム、単価二二〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としない上、数量も大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は九八七〇円、得意先売上金額は一万四七三六円となる。

〈4〉 四月分について

三日の赤エビについては、同日栄太楼への売上げを認めるに足りる証拠はなく、三四郎へ海老(数量四五〇グラム、単価二二〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としない上、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。五日の赤エビについては、同日、三四郎へ海老(数量一キログラム、単価二二〇円)を売上げたことが認められるが、同様の理由により、原告主張のような対応関係は認められない。六日のメジについては、同日栄太楼支店(数量一と四分の一、売値一万円)及び八日同本店(数量二分の一、売値三四〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一六日の子持いかについては、同日、栄太楼支店へいか(一キロ五四〇グラム)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応は認められない。一七日の太丸については、同日、栄太楼本店へ小ふぐ(売値一五〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名が異なる上、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量一本、売値七〇〇〇円)及び同支店(数量一本、売値六八〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一八日のタイについては、一キロ三六〇グラムの仕入分と一キロ七〇グラムの仕入分があり、別表1記載のとおり一キロ七〇グラムの仕入分は同日の三四郎への売上げと対応することが認められるが、一キロ三六〇グラムの仕入分に対応する三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二〇日のイワシについては、同月一八日、五郎へいわし(数量三八〇グラム)を売上げたことが認められるが、日付や数量が異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二二日のジャコについては、同日、三四郎へ海老(数量三〇〇グラム、売値六〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としないので、原告主張のような対応関係は認められない(なお、六月三日及び九月一八日のジャコについても、同様の理由により、原告主張のような対応関係は認められない。)。二七日のチシャについては、同日三四郎への石鯛の売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。三〇日の小鯛については、同日、栄太楼支店への鯛(売値五五一一円)を売上げたことが認められるが、仕入値と売値の差が僅か一一円にすぎないので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈5〉 五月分について

一一日のイワシについては、一四日栄太楼支店への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一四日のメジについては、同日、栄太楼本店へはまち(数量二分の一、売値三六五〇円)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なる上、三四郎へのはまちの売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二二日のイワシについては、二三日に三四郎へいわし(六〇〇グラム)を売上げたことが認められるが、日付や数量が異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同日のタイについては、同日、三四郎(数量一キロ四四〇グラム、単価三〇〇円、売値三六九〇円)及びベリー(売値二二五〇円)へ鯛を売上げたことがそれぞれ認められるが、後者との間では売値が仕入値を下回っているので、原告主張のような対応関係は認められないのに対し、前者との間では数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。二三日のキスについては、同日、三四郎へキスゴ(売値二二三六円)を売上げたことが認められるが、売値が仕入値を下回っているので、原告主張のような対応関係は認められない。三〇日のチシャについては、同日、三四郎へ石鯛(数量二キロ九三〇グラム、売値一万三一八五円)を売上げたことが認められ、仕入数量の合計と売上数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は一万一八三〇円、得意先売上金額は一万六八七五円となる。

〈6〉 六月分について

一日のイワシについては、同日、三四郎へスリ身(数量一キログラム、売値一〇〇〇円)を売上げたことが認められるが、甲一八の一三、一四、一七によれば、三四郎へいわしを売上げたことも認められるので、両者は異なるものと認められる上、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。六日のメジについては、同日栄太楼支店(数量一本、売値七二〇〇円)及び翌七日同本店(数量二分の一、売値三八〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同日のアワビについては、同日、五郎へあわび(数量二六〇グラム、売値一三〇〇円)を売上げたことが認められ、数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。九日のうにについては、翌一〇日もりたへの売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一二日のチシャについては、同日、三四郎に活石鯛(一キロ三五〇グラム、売値六〇七五円)を売上げたことが認められ、数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一二日のイワシについては、同日三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一五日のアジについては、同日、五郎へあじ(数量三〇〇グラム、売値一二〇〇円)を売上げたことが認められ、数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一五日のチシャについては、同日、三四郎へ天然鯛(数量四キロ一四〇グラム)及び鯛(三キロ五八〇グラム)を売り上げたことが認められるが、数量が大きく異なる上、三四郎への石鯛の売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一八日のタイについては、同日、三四郎へ鯛(数量二キロ八六〇グラム)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二一日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量一本、売値六二〇〇円)及び同支店(数量二分の一、売値三六〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二二日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量一本、売値七六〇〇円)及び同支店(数量一本、売値七二〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二三日のメジについては、翌二四日、栄太楼本店へはまち(数量二分の一、売値三七〇〇円)を売上げたことが認められるが、日付が異なる上、数量及び仕入値と売値も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二四日の小丸については、同日栄太楼本店及び同支店への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二六日のクチミについては、同日三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二八日のオコゼについては、翌二九日、五郎へオコゼ(数量一キログラム)を売上げたことが認められるが、日付が異なる上、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二九日の平目白については、同日、五郎(売値五五〇〇円)及びベリー(売値二五〇〇円)へ平目を売上げたことが認められるが、仕入値との比較から、後者との間に原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は七五三六円、得意先売上金額は一万一〇七五円となる。

〈7〉 七月分について

四日のイワシについては、同日五郎へいわし(数量三八〇グラム、単価六〇円)を売上げたことが、また、翌五日栄太楼へ小いわし(数量二分の一、売値六五〇円)を売上げたことがそれぞれ認められるが、前者とは数量及び単価が大きく異なり、また、後者とは日付が異なる上、数量及び仕入値と売値も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。五日のタコについては、翌六日、三四郎へたこ(数量一キロ五九〇グラム、単価二五〇円)を売上げたことが認められるが、売上数量が仕入数量より少ない上、売上単価が仕入単価より高すぎるので、原告主張のような対応関係は認められない。一三日のイワシについては、同日三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一九日の小丸については、同日、栄太楼支店へ小ふぐ(売値一〇〇〇円)を売上げたことが認められるが、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二三日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量二分の一、売値三六〇〇円)及び同支店(数量一本、売値七六〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同日のシャコについては、同日、もりたへしゃこ(数量二キログラム、売値三〇〇〇円)を売上げたことが認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二六日のチシャについては、同日、三四郎へ石鯛(数量二キロ五〇〇グラム、売値一万一二五〇円)を売上げたことが認められ、数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。二七日の上巻については、同日、三四郎へ千年貝(数量一キロ三五〇グラム、単価二六〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量及び単価が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。三一日のアサリについては、同日、栄太楼(数量一キログラム)及びトリアノン(売値一五〇〇円)へあさり貝を売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は八三六〇円、得意先売上金額は一万一二五〇円となる。

〈8〉 八月分について

五日のアサリについては、同日、栄太楼(数量二キログラム)及び三四郎(数量二キログラム)へあさり貝を売上げたことがそれぞれ認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。五日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量二分の一、売値三六〇〇円)及び同支店(数量四分の三、売値五六〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。七日のチシャについては、同日、栄太楼へ天然鯛(数量一、売値六〇〇〇円)及び三四郎へ石鯛(数量一キロ一七〇グラム、売値五二六五円)を売上げたことがそれぞれ認められるが、後者との間では品名が同義である上、数量も近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。八日のチシャについては、二キロ五〇〇グラムの仕入分と八三〇グラムの仕入分があり、同日、三四郎へ活石鯛(数量三キロ九五〇グラム、売値一万八九五〇円)を売上げたことが認められるが、仕入数量の合計と売上数量とが大きく異なるので原告主張のような対応関係は認められない。一二日のチシャについては、同日、三四郎へ石鯛(数量一キロ七〇〇グラム、売値八一六〇円)を売上げたことが認められ、品名が同義である上、数量も近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。二九日のチシャについては、同日、三四郎へ石鯛(数量一キロ二九〇グラム、売値六一九二円)を売上げたことが認められ、品名が同義である上、数量も近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。三〇日のチシャについては、同日、栄太楼へ鯛(数量一、売値三六〇〇円)及び三四郎へ石鯛(数量一キロ四〇〇グラム、売値六七二〇円)を売上げたことがそれぞれ認められ、後者とは品名が同義である上、数量も近似しているので、後者との間で原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。三一日の車エビ及び車エビ並については、九月二日、三四郎へ活車海老(数量二八〇グラム、売値二一〇〇円)及び車海老(数量一五〇グラム、売値七五〇円)を売上げたことが認められ、品名及び数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。三一日の蛤については、九月二日、三四郎へ蛤(数量四七〇グラム、売値七五二円)を売上げたことが認められ、数量が近似してるので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は二万〇六七七円、得意先売上げ金額は二万九九三九円となる。

〈9〉 九月分について

二日の小丸については、同日栄太楼支店への売上げを認めるに足りる証拠がないので、原告主張のような対応関係は認められない。三日の上巻については、同日、朝香へ千年貝(売値四五〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。七日のカツオについては、六日、栄太楼本店へかつお(売値一二五〇円)を売上げたことが認められるが、日付が異なる上、仕入値一六五〇円から相当下回っているので、原告主張のような対応関係は認められない。九日の上巻については、同日、三四郎へホタテ貝(数量一キロ七五〇グラム、売値二一〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一四日の小丸については、七二〇グラムの仕入分と四六〇グラムの仕入分があり、別表1記載のとおり七二〇グラムの仕入分は当日の三四郎への売上げと対応することが認められるが、四六〇グラムの仕入分に対応する三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一八日のメジについては、栄太楼本店(数量二分の一、売値四〇〇〇円)及び同支店(数量一本、七八〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一八日の上巻については、同日、三四郎へ千年貝(数量四〇〇グラム、売値一五二〇円を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二六日の小丸については、同日、五郎へふぐ(数量一キロ三八〇グラム)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。三〇日のメジについては、同日栄太楼本店(数量二分の一、売値四〇〇〇円)及び同支店(数量二分の一、売値四〇〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈10〉 一〇月分について

二日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量二分の一、売値四〇〇〇円)及び同支店(数量一本、売値八〇〇〇円)を売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二日の小丸については、同日、三四郎へふぐ(数量一キロ四五〇グラム)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。四日の小丸についても、五郎へふぐ(数量一キロ四六〇グラム)を売上げたことが認められるが、同様の理由により、原告主張のような対応関係は認められない。七日のメジについては、同日、栄太楼本店及び同支店(数量各二分の一、売値各四〇〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認めらない。九日の上巻については、同日、三四郎へ千年貝(数量三三〇グラム、売値一一五五円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のアサリについては、同日、ベリーヘあさり貝(売値七〇〇円)を売上げたことが認められるが、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のうにについては、別表1記載のとおり当日の五郎へのうに四枚の売上げと対応することが認められるが、原告主張のうに二枚に対応する五郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主義のような対応関係は認められない。一八日のメジについては、同日、栄太楼本店(数量四分の一、売値一九五〇年)及び同支店(数量二分の一、売値三九〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二三日のカニについては、同日、五郎へカニ(数量一キロ四二〇グラム)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。二八日のムキイカについては、同日、三四郎へ冷いか(数量一キログラム、売値一二〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められないので、原告主張のような対応関係は認められない。三一日の小丸については、同日、栄太楼本店へふぐ(白)(数量一キロ六〇〇グラム、売値九六〇〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈11〉 一一月分について

二日のタイについては、一キロ二五〇グラムの仕入分と一キロ四五〇グラムの仕入分があり、別表1記載のとおり一キロ二五〇グラムの仕入分は当日の三四郎への鯛の売上げと対応することが認められるが、一キロ四五〇グラムの仕入分に対応する三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。五日のかき大については、二個の仕入分と三個の仕入分があり、別表1記載のとおり三個の仕入分は当日の三四郎への大カキの売上げと対応することが認められるが、二個の仕入分に対応する三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。五日のカナトについては、同日、三四郎へ小ふぐ(数量一キロ二九〇グラム、単価一八〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、単価が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。九日の木ノ子については、同日、五郎へ海老(数量三八〇グラム、売値一三三〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としない上、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のムキイカについては、同日、三四郎へ冷いか(数量一、売値二二六二円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、仕入値と売値が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。一三日の平メについては、同日、三四郎へ〆平メ(数量九三〇グラム、売値三〇六九円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としない上、仕入値が売値を上回っているので、原告主張のような対応関係は認められない。一三日のうにについては、三枚の仕入分と一枚の仕入分があり、別表1記載のとおり三枚の仕入分は当日の五郎への売上げと対応することが認められるが、一枚の仕入分に対応する五郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一四日の小丸については、翌一五日、三四郎へふぐ(数量四キロ六九〇グラム、売値二万八一四〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一五日の水いかについては、同日、五郎へいか(数量五五〇グラム、単価三五〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としないので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈12〉 一二月分について

四日のタコについては、同日、三四郎へ飯だこ(売値三二四〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が認められない上、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同月六日のメジについては、同日、三四郎(数量一と二分の一、売値一万二五〇〇円)及び栄太楼支店(数量一本、売値八〇〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、数量及び仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一一日のうにについては、四枚の仕入分と二枚の仕入分があり、別表1記載のとおり四枚の仕入分は五郎への売上げと対応することが認められるが、二枚の仕入分に対応する五郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。一三日のチシャについては、同日、三四郎(数量一キロ八五〇グラム、売値九〇七二円)及び五郎(数量二分の一、売値三三〇〇円)へ石鯛を売上げたことがそれぞれ認められ、前者との間では数量が近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。一四日の小丸につては、同日、三四郎へかなとふぐ(数量九キロ三八〇グラム)、ふぐあら(数量三キロ三五〇グラム)及びふぐ(数量二キロ九八〇グラム)を売上げたことが認められるが、いずれも品名の同一性が認められない上、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。一六日のジャコについては、同日栄太楼へ売上げたことを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。二一日のチシャについては、同日、栄太楼(数量四分の三、売値六一五〇円)、三四郎(数量一と四分の一、売値一万〇七〇〇円)及び五郎(数量四分の一、売値二三〇〇円)へはまちを売上げたことがそれぞれ認められるが、いずれも数量及び仕入値が大きく異っているので、原告主張のような対応関係は認められない。二六日のイワシについては、同日、三四郎へいわしすり身(数量二キログラム、単価七〇円)を売上げたことが認められるが、品名の同一性が判然としない上、単価が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。二八日のカニについては、同日、三四郎へかに(数量一キロ二八〇グラム、売値五五〇四円)を売上げたことが認められ、数量も近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。三〇日のカキについては、同日、三四郎へ大かき(数量五個)の売上げが認められるが、品名の同一性が判然としない上、数量も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

そうすると、対応関係が認められる現金仕入金額は一万〇八七六円、得意先売上金額は一万四五七六円となる。

(2) 別表3について

〈1〉 一月七日のスズキについては、前記のとおり三一五〇円の仕入分と五〇〇〇円の仕入分があり、三一五〇円の仕入分は当日の栄太楼への売上げと対応するが、当日五郎への売上げを認めるに足りる証拠はないものの、三四郎への売上げは二口(数量一キロ五二〇グラム、売値五三二〇円と数量一キロ七二〇グラム、売値六〇二〇円)認められ、仕入値と売値を比較すると、売上欄記載のとおり五〇〇〇円の仕入分と後者との間で原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。同月八日のカニ、メンボ、サヨリ、アジについては、同月七日、売上欄記載のとおり五郎へかに、めんぼ、さより、あじを売上げたことが認められ、品名が同一である上、数量も近似しているので、仕入日欄の八日は七日の誤記と認めて、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。同月一七日のサザエについては、売上欄記載のとおり翌一八日に栄太楼本店へサザエ(数量一キロ一六〇グラム、単価一三〇円)を売上げたことが認められるが、仕入単価が売上げ単価を上回っている上、日付が異なり、数量も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈2〉 二月一四日のタイについては、売上欄記載のとおり同月一三日三四郎へ鯛(数量六九〇グラム)を売上げたことが認められるが、日付が前日である上、数量が大きく異なっているので、原告主張のような対応関係は認められない。同月二三日のサバについては、もりたへの売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈3〉 三月一日のサバについては、売上欄記載のとおり翌二日もりたへさば(数量五本)売上げたことが認められるが、日付が異なる上、数量も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同月一六日のアサリについては、売上欄記載のとおり当日ホットポイントへあさり貝を売上げたことが認められ、数量も同一であるので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。

〈4〉 四月一六日のメバルについては、売上欄記載のとおり当日五郎へメバルを売上げたことが認められるが、仕入単価に比較して売上単価が相当下回っているので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈5〉 五月七日のウニについては、売上欄記載のとおり翌八日三四郎へうにを売上げたことが認められ、日付は異なるが、品名及び数量が同一であるので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。同月二八日のサザエについては、売上欄記載のとおり同月二七日ボールドへさざえを売上げたことが認められるが、日付が前日である上、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈6〉 六月九日のうにについては、売上欄記載のとおり翌一〇日三四郎へうにを売上げたことが認められ、日付は異なるが、品名及び数量が同一であるので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。

〈7〉 七月一一日のアサリについては、売上欄記載のとおり同月一〇日ベリーヘあさり貝を売上げたことが認められるが、日付が前日である上、数量も不明なので、原告主張のような対応関係は認められない。同月一三日のサザエについては、売上欄記載のとおり当日ベリーヘさざえを売り上げたことが認められるが、数量が不明である上、仕入値と売値が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈8〉 八月二日の平メについては、売上欄記載のとおり同月一日五郎へ平メを売上げたことが認められるが、日付が前日であるので、原告主張のような対応関係は認められない。同月三一日の甘については、売上欄記載のとおり九月二日三四郎へ甘鯛を売上げたことが認められるが、日付が異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈9〉 九月二日の小丸については、売上欄記載のとおり三日三四郎へ小ふぐ(数量七五〇グラム、単価一四〇円)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なっている上、売上単価が仕入単価を下回っているので、原告主張のような対応関係は認められない。同月三日の甘については、売上欄記載のとおり翌四日栄太楼支店へ甘鯛(4本)を売上げたことが認められるが、数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同月七日のカツオについては、売上欄記載のとおり同月六日栄太楼支店へかつおを売上げたことが認められるが、日付が前日である上、数量も大きく異なるので、原告主張のような対応関係は認められない。同月一〇日のサザエについては、売上欄記載のとおり当日ベリーヘさざえを売上げたことが認められ、品名が同一なので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。同月一四日の小丸については、同日三四郎への売上げを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。

〈10〉 一〇月二日の小丸については、売上欄記載のとおり翌三日三四郎へ小ふぐ(数量八八〇グラム)を売上げたことが認められ、品名が同義である上、数量も近似しているので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。同月四日の小丸については、売上欄記載のとおり同月三日三四郎へ売上げたことを認めるに足りる証拠はないので、原告主張のような対応関係は認められない。同月一六日のカレイについては、売上欄記載のとおり翌一七日三四郎へかれいを売上げたことが認められ、数量も同一であるので、原告主張のように対応関係を認めるのが相当である。

〈11〉 一一月二日のタイ(数量一キロ二五〇グラム)については、別表1記載のとおり同日三四郎へ対応する売上げが認められるので、また、同日のタイ(数量一キロ四五〇グラム)については、売上欄記載のとおり同月一日三四郎へ天然鯛(一キロ八〇〇グラム)を売上げたことが認められるが、日付が前日であるので、いずれも原告主張のような対応関係は認められない。同月五日のカキ大については、三個の仕入分と二個の仕入分があり、三個の仕入分は別表1記載のとおり三四郎へ売上げたことが認められ、他方、同日ベリーヘかき(数量一二個、売値二七六〇円)を売上げたことが認められるが、二個分とは数量が大きく異なるので、原告主張のような対応関係が認められない。

(3) 以上のとおり、別表2及び3各記載のうち、対応関係を認められる現金仕入金額は一二万七〇三三円、得意先売上金額は一八万五三九三円となる。

(四) 以上によれば、別表1ないし3各記載のうち、対応関係が認められる現金仕入金額の合計額は二一七万二八六〇円、得意先売上金額の合計額は三二二万一五二九円となり、これらを基にして昭和六〇年分の原価率を算出すると、右原価率は六七・四四パーセントとなる。そして、北九州市場から直接仕入れた魚介類に係る原価率が右原価率と異なることを認めるに足りる証拠はないので、右原価率でもって昭和六〇年分の総売上金額に対する売上原価率と認めるとともに、前記認定の原告の仕入形態や販売形態によれば、年初年末の棚卸の額を同額と推定して原告の総仕入金額を売上原価の額とするのが相当である。そうすると、金額に争いのない同年分の総仕入金額二五四五万〇六六六円を右売上原価率でもって除することにより同年分の総売上金額を算出すると、右総売上金額は三七七三万八二三五円となる。

3 原告の主張について

原告は、右売上原価率による推計について、次のとおり主張するので、これらについて判断する。

(一) まず、原告は、被告の算出した原価率が魚介類の売れ残りや投売りを全く考慮していないので、これを基にした右売上原価率による推計は不合理である旨主張し、それに沿う証人永久伸子の証言や原告本人の供述を援用する。しかし、前記認定の原告の仕入形態や販売形態からすると、右売上原価率による推計結果に不合理を来すほどの売れ残りや投売りが生じているとは到底考えられないし、また、これを実額で把握してその割合を算出する客観的証拠もないので、原告の右主張及び証拠は、いづれも採用できない。

(二) 次に、原告は、昭和六〇年分の得意先売上金額の実額は三二〇〇万八九九六円、昭和六〇年一月五日から同年二月一九日までの売上金額の実額は四五一万五二二六円、同期間中の現金売上金額の実額は三〇万九一〇〇円と把握することができるので、右実額を基礎に推計を行うのが合理的である旨主張するとともに、右得意先売上金額の実額を基礎付ける証拠としては得意先に対する請求書等(甲一四の一ないし九三、一五の一ないし六八、一六の一ないし一四、一七の一ないし一四、一八の一ないし一九、一九の一ないし五、二〇の一ないし一五、二一の一ないし三、二二の一ないし八、二三の一ないし七、二四の一ないし三、二五の一ないし六、二六、二七の一ないし三、二八の一ないし三)を、また右期間中の各実額を基礎付ける証拠としてノート(甲三四の二五二、二五三)をそれぞれ援用する。しかしながら、原告自身、右請求書等の記載以外にも喜久寿司という得意先があることを自認しているのであり、しかも、前判示のように別表2及び3記載のとおり現金仕入れに対応する得意先売上げの不明なものが多数認められるのであるから、右請求書等の金額でもって右得意先売上金額の実額とは到底認められない。また、証拠(甲一六の九、一七の八及び九、一八の一一及び一二、一九の四、二〇の九、二二の三及び四、二三の四及び五、二四の三、二五の六、二六、二八の二)によれば、右期間中の得意先売上金額と右ノートの得意先売上金額とは一致しないことが認められ、また、前判示のように別表2記載のとおり右期間中にも現金仕入に対応する得意先売上の不明なものが多数存在することも明らかである。そして、原告の毎日の現金売上金額はさほどのものではなく、時には現金売上のない日もあるという前記認定事実に照らしてみると、右対応不明部分がすべて現金売上げとなっているとは考えられないので、右ノート記載の売上金額が原告の右期間中のすべての売上げを漏れなく記載した実額とは認められない。そうすると、右請求書等の金額及び右ノート記載の金額がいずれも実額であることを前提とする原告の右主張は、その余の点を検討するまでもなく、到底採用できない。

二  必要経費について

1 昭和六〇年分の必要経費のうち、争いのある三四郎に対する支払、得意先リベート、減価償却費及び給与手当について判断する。

(一) 原告は、三四郎で行われた親睦会の領収証であるとする証拠(甲三四の一八、一一五、二〇四及び二一八)を基に、その際の三四郎への支払合計八万五〇二〇円を必要経費として認めるべきである旨主張し、それに沿う供述をする。しかし、右各領収証には日付や人数の記載が欠けており、特に右二〇四以外の領収証には税額の記載も欠けているところ、右記載の不備を補ったり、これを合理的に説明し得る証拠や右領収証の発行経緯を明らかにする客観的証拠はないので、右証拠でもって右支払われた金員を原告の営業である魚介類小売業の必要経費と認めることは未だ不十分といわざるをえない。そして、他にこれを認めるに足りる証拠はないので、右主張は、採用できない。

(二) 原告は、得意先リベートとして、栄太楼本店や三四郎の板場に毎月一万円ずつ合計二四万円を支払っていたので、これを必要経費として認めるべきである旨主張し、それに沿う供述をする。確かに、原告のような営業において、取引先リベートとして現金が支払われることも考えられないではないが、これが必要経費として認められるには客観的証拠が必要であるところ、右リベートの支払等を認めるに足りる客観的証拠はなく、右供述内容をすぐに採用することはできない。したがって、他にこれを認めるに足りる証拠はないので、右主張も採用できない。

(三) 原告は、冷蔵庫の昭和六〇年分の減価償却費一六万一三五二円を必要経費として認めるべきである旨主張し、小倉冷凍発行の請求書(甲三九)を援用する。しかし、乙五によれば、右請求書は本件訴訟提起後に小倉冷凍の前田吉雄が原告の依頼を受けて再発行したものであること、その記載内容である昭和五七年一月の日付については、前田自身仕事をする以前のことなのでわからない旨述べていることが認められ、原告本人も冷蔵庫の取得日について不明確な供述をしていることを併せ考えると、右請求書の記載内容はすぐには信用できない。したがって、他に右主張内容を認めるに足りる証拠はないので、右主張も採用できない。

(四) 原告は、昭和六〇年に雇用していたアルバイト従業員の給与手当八九万円を必要経費として認めるべきである旨主張し、それに沿う供述や証人永久伸子の証言を援用する。しかし、原告からは右給与手当の支払を明らかにし得る客観的証拠の提出はなく、原告が八九万円の支払をしたとの供述や証言内容も正確なものとはいい難いので、これらの証拠をもって右給与手当の支払を認めることは困難である。したがって、他に右主張内容を認めるに足りる証拠はないので、右主張も採用できない。

2 以上によれば、昭和六〇年分の必要経費として認められるのは、原告が必要経費として主張する三〇八万八八一〇円から右必要経費とは認められなかった金額の合計一三七万六三七二円を控除した一七一万二四三八円となる。

なお、原告は、被告が従前原告の昭和六〇年分の必要経費として二二六万〇三三六円である旨を認めていたことを不利益事実の陳述として援用する旨主張するが、被告が従前主張していた推計方法を撤回して新たに別の推計方法を主張することは許されていると解されるので、原告が被告の従前の主張を不利益事実の陳述として援用すること自体無意味というべきである。したがって、原告の右主張は、採用できない。

三  控除前所得金額及び総所得金額について

1 以上により、昭和六〇年分の総売上金額三七七三万八二三五円及び金額に争いのない同年分の雑収入九六九四円の合計額三七七四万七九二九円から前記売上原価二五四五万〇六六六円及び必要経費一七一万二四三八円を控除した一〇五八万四八二五円が原告の控除前所得金額となる。そして、伸子の事業専従者控除額四五万円を控除すると、原告の昭和六〇年分の総所得金額は一〇一三万四八二五円となる。

2 ところで、原告は、この推計結果について、次のとおり主張するので、この点について判断する。

(一) まず、原告は、通常の鮮魚小売業の差益率が二六・八ないし二七・六パーセント程度であり、所得率も一六・七パーセント程度であるから、右売上原価率による推計結果は不当なものである旨主張する。しかし、甲七八の右数値がいかなる業態の鮮魚小売商を前提としているのか明らかでなく、前判示のとおり、原告の業態は、通常の鮮魚小売業者とは異なって得意先である料理飲食店に対する魚介類の注文販売を主としており、対面販売を主とする通常の鮮魚小売業者と同列に論ずることはできない。したがって、原告主張の差益率や所得率をそのまま本件に当てはめて右推計結果を非難することは許されないといわなければならないので、原告の右主張は、採用できない。

(二) 次に、原告は、右売上原価率による推計結果は原告の生活状況や財産状態に符号しない不合理なものである旨主張し、証拠(甲四二ないし四四、四五の一ないし八、四六の一ないし一六、四七の一ないし三、四八ないし六一、証人永久伸子、同森原経代、原告本人(第一、二回))を援用する。しかし、右証言や供述の内容を客観的に裏付ける証拠はないので、すぐにはそれらを採用することはできない。また、証拠(甲四二、四四、四五の二ないし四及び六ないし八、四六の二ないし四、六ないし八、一〇ないし一二及び一四ないし一六、四七の一ないし三、四八、四九)によれば、原告は、昭和五一年九月三〇日新築の木造瓦葺二階建居宅を所有しているが、右建物には抵当権の設定された形跡が全くないこと、昭和五八年中の原告の北九州信用組合に対する小切手、現金(預金振替、利息及び奨励金を除く。以下「小切手等」という。)による預金の合計額は、同組合水産出張所の普通預金口座(番号一〇〇四〇)が一三七四万二八五〇円、同組合本店の同口座(口座番号不祥)が一四九万八三二〇円、同組合口座番号一四八の同口座が一七七三万四九六〇円であること、同年末現在の原告及びその家族名義の預金残高は、右出張所の口座が七〇万六九七五円、右本店の口座が三万五八八八円、右番号一四八の口座が八五万一二二五円であり、その他、太陽神戸銀行(福岡支店)に普通預金合計五万八二八四円及び同定期預金五万円、肥後相互銀行(小倉支店)に普通預金合計一〇万六二三四円及び定期預金合計一八万円がそれぞれあったこと、昭和五九年中の原告の右信用組合に対する小切手等による預金の合計額は、右出張所の口座が一三八八万五〇三〇円、右本店の口座が六八六万六九三六円、右番号一四八の口座が一〇八〇万七〇六二円であること、同年末現在の原告及びその家族名義の預金残高は、右出張所の口座が一〇四万二二〇六円、右本店の口座が八万五〇二八円、右番号一四八の口座が五六万八〇九一円であり、その他、右太陽神戸銀行に普通預金合計六万七八〇七円及び定期預金五万円、右肥後相互銀行に普通預金合計三五万八二六一円及び定期預金合計二六万円がそれぞれあったこと、昭和六〇年中の原告の金融機関に対する小切手等による預金の合計額は、北九州信用金庫の普通預金口座が一二万九〇〇〇円、右出張所の口座が一五八二万五三五二円、右本店の口座が八一万四六八〇円、右番号一四八の口座が八二八万八一八〇円であること、同年末現在の原告及びその家族名義の預金残高は、右出張所の口座が七六万八八五〇円、右本店の口座が二八三五円、右番号一四八の口座が七八二円であり、その他、右太陽神戸銀行に普通預金五万〇六五九円及び定期預金五万円、右肥後相互銀行に普通預金一三万六一八五円及び定期預金二六万円がそれぞれあったことが認められる。そうすると、これらの認定事実によれば、右推計結果が原告の生活状況や財産状態と全く符号しないということはできないというべきであり、原告の右主張は、採用できない。

(昭和五八年分及び昭和五九年分の推計の合理性について)

一  各年分の売上原価及び総売上金額の推計について

1 被告の推計方法の合理性について

(一) まず、市場仕入率でもって昭和五八年分及び昭和五九年分の各総仕入金額を推計する方法の合理性について判断する。

前記認定事実(一の1の(一))及び証拠(甲一、四、八、原告本人(第一、二回))によれば、昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて原告の仕入形態及び販売形態に特段の変化はなく、売上の大半を占める得意先売上げをみても、原告が入院した昭和五九年初頭には売上げのない時期があるものの、その前後において失った得意先はなく、得意先売上げに大きな変化は見られなかったことが認められる。そこで、右認定事実によれば、昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて原告の市場仕入率に変動を来すような事情はうかがわれない上、推計の基礎とした昭和五八年ないし昭和六〇年の各市場仕入金額及び昭和六〇年の総仕入金額は当事者間に争いがないから、その正確性について問題とする点もないことになるから、被告が昭和六〇年の市場仕入率でもって昭和五八年分及び昭和五九年分の各総仕入金額を推計したことは、合理的と解するのが相当である。そこで、昭和六〇年の総仕入金額二五四五万〇六六六円を金額に争いのない同年分の市場仕入金額二一五九万八一七七円で除することにより算出すると、同年分の市場仕入率は八四・八六パーセントとなり、これでもって金額に争いのない右各年分の市場仕入金額(昭和五八年分は二七六八万三一一五円、昭和五九年分は二〇六二万四一三三円)をそれぞれ除することにより右各年分の総仕入金額を算出すると、昭和五八年分は三二六二万二一〇一円、昭和五九年分は二四三〇万三七一五円となる。

(二) 次に、昭和六〇年分の売上原価率でもって昭和五八年分及び昭和五九年分の総売上金額を推計する方法の合理性について判断する。

原告の仕入形態及び販売形態が昭和五八年ないし昭和六〇年を通じて変化がなかったとの前記認定事実によれば、原告の仕入形態及び販売形態や販売価格の決定方法に著しい変化がみられるなど昭和五八年分及び昭和五九年分の各総売上金額を推計するために昭和六〇年分の売上原価率を採用することが不合理であるとする事情は見当たらないので、昭和六〇年分の売上原価率でもって右各年の総売上金額を推計することは合理的と解するのが相当であり、右推計方法を不合理とする事情ないし証拠は何ら見出せない。そこで、右各年分の総仕入金額をそれぞれ前判示の昭和六〇年の売上原価率六七・四四パーセントでもって除することにより右各年分の総売上金額を算出すると、昭和五八年分は四八三七万二〇三五円、昭和五九年分は三六〇三万七五三七円となる。

(三) ところで、原告は、昭和五八年分及び昭和五九年分の得意先売上金額の実額を把握することができるとして、これに基づく独自の推計方法を主張する。しかしながら、原告が右得意先売上金額の実額を把握することができるとする証拠のうち、仕切書控(甲一六の一ないし九、一七の一ないし八、一八の一ないし一一、一九の一ないし四、二〇の一ないし九、二一の一ないし三、二二の一ないし三、二三の一ないし四、二四の一ないし三、二五の一ないし六、二六、二七の一ないし三、二八の一及び二)や請求書控(甲一四の一三ないし九三、一五の一ないし一七)等の伝票が右各年を通じてすべて保存されていないことは明らかである。そればかりでなく、証拠(乙一及び二)によれば、伝票のない昭和五八年二月二五日から同年三月二五日までのホットポイントに対する売上げや同じく昭和五九年四月六日から同年一〇月一六日までのクラブぼおるどに対する売上げが存在するにもかかわらず、これらが計上漏れとなっていることが認められる。また、江戸満から提出された証明書(甲七五の二)には昭和五八年五月一八日以前においては原告と江戸満との間には取引はなかった旨記載されているものの、証拠(甲二四の一)に記載された右同日から同年六月一六日までの間の売上金額の合計は六万二三六〇円であるのに対し、右同日の伝票には江戸満から原告に対して一〇万円の入金があったことがうかがえる記載があり、原告自身も紛失した伝票がある旨を供述する。そうすると、右証明書の記載内容はすぐには信用できないばかりでなく、右伝票等に記載のない取引の存在がうかがわれるところである。そして、栄ちゃん、朝香、もりたからも原告との間の取引が中断ないし中止していたとの証明書(甲六六ないし六八の各二)が提出されているが、これとても、右の江戸満の例からしてすぐには信用できず、右証明書は売上げの計上漏れを否定し得る根拠とはならない。そうだとすれば、他に右実額を把握し得る証拠がない以上、原告の右主張は、到底採用できない。

また、原告は、昭和五九年初めに入院、休業したために得意先を失うなどして売上げが減少した旨主張するが、証拠(甲一、四、八)によると昭和五八年から昭和五九年にかけて失った得意先を特段見出すことはできない上、原告本人の供述によっても失った得意先を明確にすることはできないから、得意先ばかりでなくその減収額を把握することも不可能である。そして、前判示のとおり、昭和五九年分の総売上金額が昭和五八年分や昭和六〇年分に比べて低下していることからすると、原告が入院して休業したために減収となった事情は、推計された昭和五九年分の総売上金額に十分反映されているものと解するのが相当である。したがって、原告の右主張も採用できない。

二  各年分の控除前所得金額及び総所得金額について

1 被告は、昭和五八年分及び昭和五九年分の必要経費を実額で把握できないことから、昭和六〇年分の控除前所得率でもって昭和五八年分及び昭和五九年分の控除前所得金額を推計しているが、右推計に際して採用されている昭和五八年分及び昭和五九年分の総売上金額は、前判示のとおり、合理的な方法に基づく推計額であるから、これを基礎とすることが相当であることはいうまでもない。また、昭和六〇年分の総売上金額については、当事者間に争いはなく、同年分の控除前所得金額も合理的な推計額であることは前判示のとおりである。そこで、控除前所得率による推計方法が適切なものか否かが問題となるが、前判示のように、原告の仕入形態及び販売形態並びに販売価格の設定方法が昭和五八ないし昭和六〇年の間において変わるところはなかったのであるから、控除前所得率も右期間中において変化はないものと認めるのが相当である。そして、他に昭和六〇年分の控除前所得率でもって昭和五八年分及び昭和五九年分の各控除前所得金額を推計することに不都合な点は何ら見出せないのであるから、右推計方法は、合理的なものとして是認するのが相当である。そして、昭和六〇年分の控除前所得金額一〇五八万四八二五円を同年分の総売上金額三七七三万八二三五円でもって除することにより算出すると、同年分の控除前所得率は二八・〇四パーセントとなり、これを昭和五八年分及び昭和五九年分の各総売上金額に乗じて右各年分の控除前所得金額を算出すると、昭和五八年分は一三五六万三五一八円、昭和五九年分は一〇一〇万四九二五円となる。

そうすると、原告の昭和五八年分の総所得金額は右同年分の控除前所得金額から伸子の事業専従者控除額四〇万円を控除した一三一六万三五一八円、昭和五九年分のそれは右同年の控除前所得金額から伸子の事業専従者控除額四五万を控除した九六五万四九二五円となる。

2 これに対し、原告は、右推計方法に対して、昭和五八年分及び昭和五九年分各売上原価及び一般経費を実額で把握することはできないが、雑収入や支払利息、割引料、給与手当、地代家賃などの特別経費については実額で把握することができることから、前記のような独自の推計方法を主張している。しかしながら、前判示のとおり、原告が右推計の基礎とする昭和六〇年分の総売上金額は不合理な推計方法によって算出されたものであるから、これを推計に用いることは許されないし、仮に右特別経費が実額で把握できたとしても、それは必要経費額のごく一部を構成するにすぎないから(これを基にした合理的な推定がなしうるのであればともかく、原告は、何ら合理的な推計を主張していない。)、右特別経費を考慮する必要は全くないことになる。したがって、原告の右主張も採用できない。

(結論)

以上のとおり、適法に推計された原告の昭和五八年分ないし昭和六〇年分の各総所得金額がいずれも本件処分において認定された右各年分の総所得金額を上回っていることは明らかであるから、被告が行った本件処分は、いずれも正当であるといわなければならない。したがって、本件処分の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものとしていずれもこれを棄却する。

(裁判長裁判官 中山弘幸 裁判官 渡邊弘 裁判官鈴木博は、転補のため署名、押印することができない。裁判長裁判官 中山弘幸)

別表1

.

別表2

別表3

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例